統一論題「今求められる経営の変革の視点とシステム監査」
"Required Viewpoints of Management Reform and Systems Audits"
講演要旨一覧
<基調講演> 今、求められるICTによる経営の変革と課題について "ICT for Business Transformation - Opportunities and Challenges" |
東京海上日動火災保険(株) 常務取締役 横塚 裕志 氏 |
「経営とICTの融合」「ICTを活用した経営改革」というような言葉をしばしば耳にするようになったが、それが具体的にどういうことかというと、あまり定説がないのが実情ではないだろうか。また、経営におけるICTの重要性は疑う余地もないが、ICTをどのように扱えば経営にとってうまく機能するか、経営とICTをどのように融合させるべきか、漠然としたイメージはあるものの、明確な方法論は確立していないのではないか。 コンピュータが「事務処理機械」として用いられていた20世紀に比べ、21世紀のICTは情報収集・解析、コミュニケーション、制御など、ビジネスや日常生活のあらゆる局面で重要な役割を担っている。のみならず、ICTは変革を引き起こす「触媒」の役割をも果たしている。ICTを経営戦略に活かし、ビジネスを変革していくには、ICTとビジネス双方に関する深い理解、「20世紀型」とは異なる柔軟な発想力、そしてICTを支える人材の育成と動機付けなど、幅広い努力と工夫が必要である。 本講演では単にそれらの課題に対する回答を提示するのではなく、ご出席の皆様と問題意識を共有し、共に考える場としたい。 |
<講演1> 情報セキュリティの投資効果の考え方 "ROI of Information Security from an management view point" |
公認会計士/会計システム専門監査人 清水 惠子 氏 |
投資効果は、多くの場合は、その投資による費用の削減、収益の獲得により評価する。環境のように金額ではなく、CO2の削減の数値が算定基礎になるものもある。情報セキュリティ投資については投資に対する明確な収益、CO2のような明確な数値目標がない。このため、企業の経営者もセキュリティ担当者も適正な情報セキュリティ投資の規模が把握しづらい。情報セキュリティは、単にITの技術的な面よりも人的なミスにより漏えい等のインシデントが発生する場合が多い。一つの投資に対する直接的な効果だけではなく、リスクを前提として企業が全体としてそのリスクに対応する情報セキュリティ力を身につけているかの観点から情報投資効果を考えたい。 |
<講演2> JIPDEC調査にみるIT統制の成熟度-理論的な関心からみたその実態- "Some observations on the maturity level of IT controls in the JIPDEC research paper" |
日本大学 堀江 正之 氏 |
2007年10月から12月にかけて実施された(財)日本情報処理開発協会(JIPDEC)のIT統制に関する実態調査結果(IT統制の法対応をめぐる実態、IT統制の成熟度についての意識調査、情報サービス産業における法対応実態からなる総合的な調査)を踏まえて若干の所見を紹介したいと思う。特にIT統制の成熟度にスポットを当てて、「IT統制の構成要素(統制環境、リスク評価、統制活動、情報と伝達、監視活動)のバランス」に注目することがよいかどうかをはじめ、ポストJ-SOXをにらんだ検討を試みる予定である。 |
<専門監査人部会報告1> 情報セキュリティ専門監査人部会報告「情報セキュリティ監査に役立つ着眼点と監査ノウハウ」 "Useful practices for Information Security Audits from professional viewpoints" |
情報セキュリティ専門監査人部会/(株)バルク 内藤 裕之 氏 |
システム監査人が情報セキュリティ監査を行う時、各種基準やチェックリストに基づけば、表面的な実査になりかねないことが懸念される。 そこで、各種基準やチェックリストには盛り込まれていないような「実態を確認しやすい着眼点」や「具体的な改善アドバイス」につながるノウハウを抽出し、システム監査人に役立つことを狙いに研究活動を続けた成果の報告である。 |
<研究プロジェクト報告1> 情報セキュリティ研究プロジェクト成果報告「経営者による情報セキュリティ強化の手引き−あなたの組織のセキュリティ対策は?−」 "The Guidance for CEOs to Strengthen their Information Security --How Secure Are Your Organizations?--" |
情報セキュリティ研究プロジェクト/ISU 植野 俊雄 氏 |
情報セキュリティ研究プロジェクトでは、2007年度研究テーマを「中小組織の情報セキュリティの確立と強化のために役に立つ具体的な方法を提案する」として、1年間研究してきた。 J-SOX法が適用され、IT統制が緊要となっている時期にもかかわらず、経営者のリスク認識が弱い、セキュリティ知識が低い、セキュリティに対応する人材がいない、等課題を抱える中小組織がある。そうした現状課題を解決させたい想いで検討を行い、『経営者による情報セキュリティ強化の手引き』を作成した。 この手引きは、ネットワーク等の専門家がいないような中小組織の経営者の内部統制整備を助けるために、経営者が自らの組織の現状をセルフチェックすることで、経営者が本来の責任を自覚し、組織のセキュリティレベルや課題を掌握でき、追加対応の要否を判断し、追加対応が必要であれば実施策の実行を指示することができるようになっている。 本手引きは、JIS Q 27002規格(「情報技術―セキュリティ技術―情報セキュリティマネジメントの実践のための規範の管理策」)に対応し、そのサブセットとなっているので、発注主から情報セキュリティ対応の評価アンケート等の要請があった場合や、将来ISMSに取り組む時に、これらと整合性を取ることができる内容である。 |
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