◆発刊にあたって
わが国におけるシステム監査の⽬的は、経済産業省のシステム監査基準に象徴されますように、企業その他組織体における情報システムの信頼性・正確性・安全性を担保することにとどまらず、効率性・有効性の向上、さらには IT ガバナンスの実現に寄与しつつ、豊かで健全な情報化社会の実現に向けてその⼀翼を担うことを標榜しております。
当学会は、このようなシステム監査に関わる研究を社会科学、とくに経営学関連の応⽤的ディスプリンとして確⽴すべく研究を深耕させ、同時にその実践を嚮導する⽬的で 1987 年に設⽴されました。
もちろんシステム監査研究が科学としての固有の“累積的伝統”が⽋如しているがゆえに、当該研究の参照科学となる監査論、会計学、経営学、リスクマネジメント、情報システム論、管理⼯学、システム論、コンピュータ科学等々の専⾨領域においてシステム監査に関わる専⾨的研究の必要性を認識している研究者、そして企業および組織体での監査および情報化実践とそのコンサルティング等々に関わるエキスパートによって学際的に研究を展開して今⽇に⾄りました。
この「システム監査学会 30 年史」の上梓の意図するところは、まずはこれまでの学会の諸々の活動および学会が今⽇に⾄る関連する重要な出来事や意外と知られていない事実等々の記録を改めて整理・総括をして、会員のみならず多くの⽅々に学会の歴史に触れて、そして当学会へのさらなる理解を深めていただきたいという思いがあります。
さらには、現在、⼤学を始めとする研究・教育機関では遂⾏すべき機能や応⽤的実践教育の⾒直しが進み、研究者や教育者の本来業務が従来に⽐して学内業務優先であるかのように変容しつつあります。この流れと連動するかのように多くの学会がその運営や組織の存続さえも難しくなっている状況も少なくありません。このような状況において、さらなる当学会の発展への「決意表明」として、そしてひとつの「マイルストーン」とすべく編纂に⾄りました。
本史がシステム監査学会 30 年の歩みを振り返えるガイドとなり、そして未来へとつなげる橋渡しの役割を果たすことができるならばこのうえない喜びです。
システム監査学会 会長 遠山 曉
(本誌 - 会長挨拶より抜粋)
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